集会長 柴 喜崇

集会長 柴 喜崇

 本集会のテーマを「災害と循環器病に対する予防理学療法の可能性 ~世界を考え、地域で行動する~」としました。東日本大震災、福島第一原子力発電所事故(以下、本災害)の被災地である福島県で日本予防理学療法学会サテライト集会が開催されることに意義を見出し、震災からの復興を背景に地域の健康について再考し、予防理学療法を通して我々理学療法士ができることをシンポジウム、教育講演、演題発表を通して議論し明らかにしたいと考えています。

開催内容は、テーマに沿って、一つ目は「災害に対する予防理学療法の可能性」としました。現在、大規模な災害が多発するわが国では、災害による環境の変化、生活習慣の変化は被災者の健康状態を悪化させることが報告されています。特に、2011年3月11日の東日本大震災、その後の本災害は、多くの被災者が避難を余儀なくされる大規模災害であり、福島県内の被災者における心身の健康への悪影響について報告がされています。昨今の災害の多発を受けて、防災・減災のための「備え」の重要性が認識されてきました。しかしながら、災害時の被災者の健康影響に対しての予防理学療法のエビデンスは非常に限られています。そこで、本災害を経験した福島県における経験を振り返ることで、予防理学療法学的観点から一次予防・二次予防・三次予防の課題を抽出します。これにより、今後生じうる大規模災害への備えとして、災害後の各フェーズにおける理学療法士の役割を提言することを目的とします。

二つ目は「循環器病に対する予防理学療法の可能性」としました。福島県では脳血管疾患及び虚血性心疾患の年齢調整死亡率が男女ともに高い状況にあることから、循環器病の危険因子である肥満や、高血圧、脂質異常、糖尿病、メタボリックシンドローム、喫煙への対策が重要となっています。つまり、生活習慣病からの循環器病予防対策(戦略)が重要な課題となります。国際的・国内の動向を踏まえ、福島県の課題と取り組みについて議論し、議論された内容を集約し、生活習慣病からの循環器病予防対策(戦略)の課題解決に向けた学会としての提言とします。

シンポジウムでは、予防理学療法に関わる理学療法士、多職種間で「地域の健康」について意見交換を行います。議論から、現時点での課題抽出、解決策を見つける機会とし、加えて、理学療法士、他職種、地域の方々に予防理学療法に関する知見を広く啓発し、未来の理学療法発展の一助にできればと考えています。

災害に対する理学療法士の役割と循環器病予防に対する理学療法士の役割に関する提言は、「福島ステートメント」としてまとめ行政、関係機関への提出を目指します。